小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

インフルエンザのAI診断 vs 迅速抗原検査:発症からの時間と小児患者背景が診断結果に与える影響

 インフルエンザの診断において、AI搭載の検査機器(nodoca)(

AI搭載インフルエンザ検査医療機器nodoca|nodoca)が保険適応になっています。抗原検査のように痛くないというメリットがある反面、ウイルスそのものを捉えていないため感度・特異度が十分なのかという疑問はあります。(メーカーとしては、感度76%、特異度88%としていますが)

 この検査機器は、咽頭後壁のリンパ濾胞(通称いくらサイン)を参考にしていますが、他のウイルス感染症でも見られることがあるので、検査結果の判断には注意が必要です。

 長崎から、迅速抗原検査とnodocaの検査特性の違いを明確にした非常に有用な論文が出ましたので、インフルエンザ流行前に読んでおくことをおすすめします。

 

要点:発症初期の小児では有用性があるかもしれないが、(特に他のウイルス疾患と鑑別が必要な場面において)感度・特異度とも低い可能性がある。

・AI診断と迅速抗原検査の陽性一致率は47%、陰性一致率は71%。
・AI診断は、発症から24時間以内・小児で陽性になりやすい。
・SARS-CoV-2陽性患者の23%が、AI診断でインフルエンザ陽性と診断された。

  AI陽性 AI陰性
抗原検査陽性 125 144
抗原検査陰性 127 317

 

Infectious disease diagnosis by artificial intelligence (AI): Differences in patient backgrounds and symptoms between antigen test positives and novel AI-powered pharyngeal endoscopy test positives.

 PLOS Digit Health. 2026;5(2):e0001233. https://doi.org/10.1371/journal.pdig.0001233

はじめに

 季節性インフルエンザの迅速診断は、治療方針の決定や感染拡大防止に極めて重要な役割を果たしています。従来は鼻咽頭拭い液を用いた迅速抗原検査(Ag検査)が主流でしたが、咽頭後壁のリンパ濾胞(いわゆるインフルエンザ濾胞)などの画像所見と臨床情報を統合して判定するAI搭載咽頭内視鏡システムが日本で実用化されました。本システムは非侵襲的な検査法として期待されていますが、従来の抗原検査とどのような患者背景や症状の違いがあるのかは十分に明らかになっていませんでした。

 実臨床において、迅速抗原検査とAI診断システムの判定結果を直接比較し、陽性となる患者背景や臨床像の特徴を検討しました。

方法

 本研究は、長崎県の佐世保記念病院および森山内科において、2024年2月から2025年3月にかけて実施された横断研究です。5歳以上で発熱外来を受診し、インフルエンザおよび新型コロナウイルス(COVID-19)の迅速抗原検査とAI診断の両方を受けた患者が登録されました。

 登録された864名のうち、画像認識が完了した813名を解析対象としました。AIシステムには、年齢、性別、発症からの経過時間、周囲の感染者との接触歴、解熱薬の使用歴、ワクチン接種歴、臨床症状などの情報が入力され、専用カメラで撮影された咽頭画像とともに診断が行われました。

 解析では、COVID-19抗原陰性例を対象として、抗原検査陽性群とAI検査陽性群の一致率や発症から検査までの時間を評価しました。さらに多変量ロジスティック回帰分析を用いて、抗原陽性例とAI陽性例における背景や症状の差異を算出しました。また、COVID-19抗原陽性例におけるAIの偽陽性例についても詳細な検討を行いました。

結果

 COVID-19抗原陰性であった713例において、抗原検査を基準とした場合のAI診断の一致率は62%(442/713例)、陽性一致率は47%(125/269例)、陰性一致率は71%(317/444例)でした。また、AI陽性かつ抗原陰性となる症例は、成人よりも15歳未満の小児で有意に多く認められました(オッズ比 3.1, p<0.001)。

 発症から検査までの時間の中央値は、AI陽性/抗原陰性群で18時間、両者陽性群で24時間、AI陰性/抗原陽性群で27時間であり、AI陽性例は抗原陽性例に比べて有意に早期に受診していました(p<0.001)。この傾向は小児において特に顕著でした。

 AI陽性/抗原陰性群とAI陰性/抗原陽性群を比較した多変量解析では、AI陽性群において小児(15歳未満:オッズ比 3.4)、発症24時間未満の受診(オッズ比 2.6)、感染者との接触歴(オッズ比 4.6)、咳嗽(オッズ比 11)、38.0℃以上の発熱(オッズ比 5.6)が有意に多い結果となりました。

 一方、COVID-19抗原陽性かつインフルエンザ抗原陰性の99例中、23例(23%)がAIによってインフルエンザ陽性と誤判定されていました。これらの症例はPCR検査にてCOVID-19陽性・インフルエンザ陰性が確認されています。

 

 

 

考察

 本研究の結果は、抗原検査とAI診断が捉えている生体現象の違いを示しています。抗原検査は病原体のウイルス量を検出する検査であるのに対し、AIシステムはウイルス侵入に対する生体の局所免疫反応(咽頭濾胞の形成など)を検出しています。

 咽頭後壁のリンパ濾胞は発症後約8時間の早期から出現するとされているため、ウイルス量が十分に増加していない発症初期(24時間未満)においてAI診断が優位性を持つと考えられます。小児は、強い局所免疫応答を示すため、AIでの陽性判定が出やすいと推察されます。

 臨床現場における留意点として、AI診断の特異度と他疾患の鑑別が挙げられます。本研究で示されたように、COVID-19感染症でも咽頭後壁に類似の濾胞や発赤を形成することがあり、AIがこれをインフルエンザと誤認するリスクが確認されました。

 したがって、流行状況や周囲の感染歴、発症からの経過時間を総合的に判断することが重要です。発症初期の小児ではAIの活用が有用な選択肢となる一方、発症後時間が経過した症例や他ウイルスとの鑑別が必要な場面では、従来の抗原検査や核酸増幅検査を適切に組み合わせる必要があります

結論

 本研究により、インフルエンザAI咽頭内視鏡診断システムは、発症後早期に受診した小児や、発熱・咳嗽などの典型症状および接触歴を有する患者において陽性となりやすい特性が示されました。

 鼻咽頭拭い液の採取が困難な小児の早期診断において、AIシステムは有用な補助ツールになり得ます。ただし、COVID-19をはじめとする他の呼吸器ウイルス感染症による咽頭所見との重複による偽陽性の可能性も念頭に置く必要があります。

 検査モダリティごとの検出原理の違いを正しく理解し、受診タイミングや臨床所見に応じた柔軟な使い分けを行うことが、精度の高い外来感染症診療につながると考えられます。

 

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小児細菌性髄膜炎の再発リスクと原因菌:オランダ32年間の全国大規模コホート研究

 細菌性髄膜炎は、小児科救急において、迅速な評価と治療の開始が必要になる病気です。ヒブワクチンと肺炎球菌ワクチンの導入により、症例数は減ってきています。しかし、新生児のGBSや大腸菌による髄膜炎もあり、こちらはあまり減っていない印象です。

 細菌性髄膜炎の再発率はどのくらいなのか、検討したオランダのナショナルサーベイです。再発率は0.6%ということですが、菌によりかなり差があります。再発率が高い金は、大腸菌(2.3%)、肺炎球菌(1.4%)あたりです。

 

Recurrent bacterial meningitis in children in the Netherlands: a nationwide surveillance study.

BMJ Open. 2023;13(12):e077887. doi:10.1136/bmjopen-2023-077887.

はじめに

 小児の細菌性髄膜炎は、ワクチンの普及に伴い、発症数が著しく減少しました。一方で、細菌性髄膜炎の「再発(Recurrence)」に関する長期的・大規模な疫学データは極めて限られていました。

 成人領域では、再発率が4〜9%程度と報告されており、髄液漏などの解剖学的異常や免疫不全の精査、および追加ワクチン接種が推奨されています。しかし、小児における再発率やその臨床的特徴、リスク因子については十分な解明が進んでいませんでした。

 本研究は、オランダ細菌性髄膜炎参照研究所(NRLBM)の32年間にわたる全国サーベイランスデータを用い、小児細菌性髄膜炎の再発率、原因菌の推移、および初発時のリスク因子を詳細に解析したものです。

 

方法

 研究対象は、1987年7月1日から2019年6月30日までの期間に、オランダ国内で髄液培養陽性の細菌性髄膜炎と診断された18歳未満の小児9,731名です。NRLBMは国内の全髄液由来株の約90%をカバーしています。

 「再発」の定義は、初回の陽性培養から28日超経過した後に再び髄液培養陽性となった場合、または28日以内であっても初回と異なる菌種が検出された場合と設定されました。各病原体の血清型・血清群の決定は既定の血清学的・分子生物学的手法で行われました。

 解析では、人口10万人あたりの年間罹患率の推移(1988–2003年と2004–2019年の比較)や、Cox比例ハザードモデルを用いた再発の予後因子の検討が行われました。個人の追跡期間のばらつきを補正するため、初発後3年以内の再発リスクに関するサブ解析も実施されています。

 

結果

 対象となった9,731名のうち、63名(0.6%)が再発を経験し、計85回の再発エピソードが確認されました。初発例全体では髄膜炎菌が52%で最多でしたが、再発症例では肺炎球菌が52%と過半数を占めました。

 小児人口における初回発症の年間罹患率は、10万人あたり11.81から2.60へと大幅に減少(IRR 0.25)しましたが、再発の年間罹患率は10万人あたり0.06から0.03へと有意な変化を示しませんでした(IRR 0.65)。また、初回発症から3年以内の個人再発リスクは上昇傾向を示しました。

 多変量解析において、再発のリスク増加と有意に関連していた因子は、初回発症時の年齢が5歳以上であること(OR 3.6)、および初回発症の原因菌が大腸菌(E. coli)であること(OR 25.7)でした。

 大腸菌による再発例はすべて生後90日未満の乳児期に初回を発症しており、初回から35〜48日という比較的短い期間で同一のO群による再発を認めていました。



考察

 本研究により、小児における細菌性髄膜炎の再発率は0.6%であり、成人よりも低いものの、一般人口と比較すると依然として高いリスクが存在することが実証されました。

結合型ワクチンの導入により初回発症数が激減したにもかかわらず、再発の罹患率が減少しなかった背景には、再発例の多くに解剖学的異常や補体欠損などの基礎疾患が存在している可能性が挙げられます。ワクチンは予防に有効ですが、ハイリスク小児の再発予防には追加の対策が必要となります。

 特に大腸菌が原因菌であった乳児における早期再発率は高いため、髄液の無菌化の確認や抗菌薬の投与期間、潜在的な解剖学的・免疫学的異常の精査についてさらなる臨床研究が求められます。

 また、現行の定期接種ワクチンに加え、PCV13、PPV23、MenB、MenACWYなどの広範なワクチンを追加接種することで、理論上は再発エピソードのカバー率を35%から48%へ向上させることが示唆されています。

 

結論

 オランダにおける30年間の全国サーベイランスデータから、小児細菌性髄膜炎の再発率は約0.6%であり、初回発症数が減少し続ける中でも再発リスクは持続していることが判明しました。

 5歳以上での初回発症や大腸菌による髄膜炎は再発の高リスク因子であり、これらの症例では基礎疾患の精査および広範な追加ワクチン接種の検討を含めた個別化ケアが重要となります。

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小児のBrodie膿瘍における臨床像と治療経過:10年間の単一施設後方視的解析

 小児の骨髄炎は、急性発症のケースが多いのですが、Brodie膿瘍のような亜急性の経過もあります。発熱などの全身症状に乏しいのが特徴です。大部分が下肢の骨に発症するようで、知っておく必要があります。

 

Brodie Abscess in Children: A 10-Year Single Institution Retrospective Review.

Pediatr Infect Dis J. 2019 Feb;38(2):e32-e34.

 

はじめに

 ブローディ骨膿瘍(Brodie abscess)は、海綿骨内に境界明瞭な膿瘍を形成することを特徴とする亜急性血行性骨髄炎の一形態です。小児亜急性骨髄炎の発症率は年間10万人あたり約5人と報告されています

 本疾患は発熱や局所症状が乏しいケースも多く、全身状態が比較的良好であるため、診断に苦慮することが少なくありません。診断の遅れや骨腫瘍などの他疾患との鑑別が臨床上の課題となります小児のブローディ骨膿瘍に関する知見は症例報告や小規模ケースシリーズに限られており、最適な治療方針や予後データは十分に確立していません。本稿では、テキサス小児病院で行われた10年間の後方視的研究をもとに、その臨床的特徴と経過を解説します

 

方法

 研究グループは、2007年7月から2017年11月までの期間にテキサス小児病院の小児感染症科で診療を行った患者データベースを対象に検索を実施しました。画像上骨内に膿瘍形成を認め、亜急性または慢性の骨髄炎と診断された15例の小児患者を抽出しました病変の大きさや部位、容積の計測は小児小児放射線科医が独立して再評価を行いました。電子カルテより、患者背景(年齢、性別)、臨床症状、発症からの期間、血液検査所見(白血球数、CRP、赤沈)、細菌学的なデータ、治療内容および転帰の情報を収集し解析しました

 

結果

 対象となった15例の年齢中央値は4歳(範囲: 4か月〜12歳)で、男女比は1.1:1でした。受診時の主訴としては局所の疼痛(80%)と跛行(60%)が多く見られ、発熱を認めたのは27%にとどまりました。発症から受診までの期間の中央値は3週間でした

 罹患部位は大腿骨が最も多く(67%)、次いで足関節周辺の骨などが認められました。病変の局在は骨端線近傍の骨幹端または骨端であり、骨幹部の単独病変は見られませんでした。炎症反応の昇昇は軽度な例が多く、赤沈値の上昇(>20 mm/h)は53%で認められたものの、白血球数やCRPの著明な上昇を示す症例は限定的でした

 起因菌としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が9例(60%)と過半数を占めました。内訳はMSSAが7例、MRSAが2例でした。また、病理組織標本からの遺伝子解析(PCR検査)により結核菌(Mycobacterium tuberculosis)が確定診断された症例が1例ありました。一方、全体の33%(5例)では起因菌が特定されませんでした治療では、14例で経皮的骨生検または外科的切開生検・デブリードマンが施行されました。抗菌薬の投与期間は、4週間から最長2年に及び、経口抗菌薬への変更やクリンダマイシン、セファレキシンなどの投薬が行われました。再手術を行なった症例が4例存在したものの、多くの症例で良好な経過が得られました

 

 

 

考察

 本研究は、ブローディ骨膿瘍が比較的軽微な症状や正常に近い血液検査結果で発症し得るという臨床的特徴を改めて示しています。発熱を伴わない局所の痛みや跛行が持続する場合、本疾患を鑑別診断に挙げることが極めて重要です

 

 

 画像診断においては、X線での骨透亮像と硬化縁、MRIでpenumbra signが診断の参考になります。しかし、骨軟骨腫、骨芽細胞腫、ランゲルハンス細胞組織球症などの骨腫瘍性病変との鑑別が難しい場合もあり、確実な診断と病原体の特定のためには組織生検および培養検査が推奨されます

 

 

 起因菌としては黄色ブドウ球菌が主体ですが、培養陰性例の一部にはKingella kingaeなどの培養困難な菌が関与している可能性も指摘されています。核酸増幅法(PCR)などの分子生物学的検査の活用が、今後の診断率向上に寄与することが期待されます

 

 

 また、本研究は単一の三次医療機関における後方視的検討であり、感染症科へコンサルトされなかった軽症例が含まれていない可能性などの選択バイアスが存在します。地域による病原菌の検出パターンの違いも考慮する必要があります

 

 

 

結論

 小児のブローディ骨膿瘍は、臨床症状や血液検査の所見が軽微であっても否定できません。持続する骨痛や跛行を認める小児においては、適切な画像検査と組織生検による早期診断が求められます適切な外科的処置と長期的な抗菌薬投与を組み合わせることで、多くの症例で良好な予後が期待できます。症状が非定型的な場合であっても、本疾患の可能性を念頭に置いた丁寧な対応が重要となります

 

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幼少期に猫を飼うと、統合失調症のリスクが増える??

 ホンマでっか?みたいな研究です。幼少期に猫を飼うと、統合失調症のリスクが増えるのではないかという研究です。原因として、トキソプラズマ感染が関連しているのではないかという考察がありますが、どうなんですかね。統合失調症の患者さんのトキソプラズマ抗体と統合失調症の関連があるデータもあるそうなので、興味深いデータです。
 全国の猫好きの皆様、すみません。

 

Is childhood cat ownership a risk factor for schizophrenia later in life? 
Schizophr Res. 2015;165(1):1-2.

はじめに

 小児期における環境要因が、将来の精神疾患の発症リスクに与える影響については多角的な研究が行われています特に、家庭内でのペット飼育と精神疾患の関連については、病原体の感染や免疫応答の観点から関心を集めています

 1995年および2000年の研究において、小児期に猫を飼育していた経験が、後の統合失調症や重篤な精神疾患の発症リスクを高める可能性が示唆されました本研究は、未公表の大規模調査データを解析することで、この関連性が再現されるか検証することを目的として実施されたものです

 

方法

 研究グループは、1982年に全米精神疾患家族会(NAMI)の年次大会で収集された、未公表の調査データを再解析しました 対象は、統合失調症または統合失調感情障害と診断された家族を持つNAMI会員で、2,125件の有効回答が得られました

 調査項目には、患者が出生してから13歳までに家庭で猫を飼育していたかどうか情報が含まれていました対照群には、1991年に米国家庭動物医学会(AVMA)が実施した世帯調査から、本研究群と背景が類似する「Middle parents」群(4,087世帯)のデータを使用しました両群における小児期の猫飼育率を比べることで、統計学的な関連性を検討しました

 

結果

 解析の結果、1982年のNAMIデータにおいて、0歳から13歳までに猫を飼育していた割合は50.6%(1,075/2,125)でした一方、対照群であるAVMA調査における猫の飼育割合は42.6%(2,065/4,087)にとどまりました両群の比較において、小児期に猫を飼育していたグループで統合失調症などを発症するリスクが統計学的に有意に高く認められました(p < 0.0001, オッズ比 1.38, 95%信頼区間 1.25-1.53)この結果は、1992年調査(症例群50.9% vs 対照群39.4%)および1997年調査(症例群51.9% vs 対照群42.1%)のデータと極めて類似していました

 

 

考察

 本研究により、過去3つの異なる調査において、小児期の猫の飼育歴が将来の統合失調症発症と有意に関連することが示されました

 この現象を説明する仮説メカニズムとして、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)の関与が挙げられます猫はトキソプラズマの終宿主であり、オーシストを糞便中に排泄します。オーシストは砂場や公園などの環境中で長期間生存可能ですトキソプラズマ抗体陽性と統合失調症の関連を示すメタアナリシスや、同原虫がドーパミン産生に関与する報告も存在しますただし、猫を飼育していない場合でも屋外で感染する可能性や、他の感染症、アレルギー反応などの交錯要因についても考慮する必要があります

 

結論

 小児期における家庭内での猫の飼育は、将来の統合失調症や重症精神疾患の発症リスクと関連している可能性が示唆されましたもし環境要因としての接触がリスクである場合、適切な公衆衛生上の介入や予防策によってリスクを低減できる可能性があります著者らは、この関連性が真に因果関係を持つものであるかを検証するため、他国や異なる集団での更なる追試研究を求めています 

 

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 実際に、トキソプラズマ症と精神疾患との関連は色々検討されているようで、統合失調症との関連が最も強いそうです。

The linking of toxoplasmosis and schizophrenia

トキソプラズマ症と統合失調症の関連性

 トキソプラズマ症は、原生生物であるToxoplasma gondiiによって引き起こされます。トキソプラズマは中枢神経系への感染を強く好むため、研究者らはアルツハイマー病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症、双極性障害、脳性麻痺、うつ病、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、強迫性障害、パーキンソン病、人格障害、統合失調症など、様々な神経疾患および精神疾患との関連性を調査してきました。

 これらの疾患の中で、トキソプラズマ・ゴンディが関与しているという最も強い証拠は、精神病全般、特に統合失調症に関するものです。本稿では、この関連性の起源を概説し、それを裏付ける現在の証拠を簡潔にまとめ、今後の研究戦略について考察します。

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小児の薬剤耐性菌(AMR)世界動向と2035年予測:WHO AWaRe分類に基づく82カ国大規模データ解析

 薬剤耐性は大きな問題ですが、小児でも同じです。世界的に見ても、日本では比較的耐性菌が少ないですが、世界では感染症治療の切り札といえるような抗菌薬への耐性が当たり前に見られます。

 外国人旅行者や居住者が増える中、他人事ではありません。

 

Childhood Antimicrobial Resistance With Global Forecasts.

JAMA Pediatr. Published online July 20, 2026. doi:10.1001/jamapediatrics.2026.2808

 

はじめに

 薬剤耐性(AMR)は、世界保健機関(WHO)が地球規模の保健課題として位置付ける深刻な問題です。小児は、集団生活等による感染伝播の機会も多いため、抗菌薬投与を受ける機会が多いです。海外では生後1歳までに90%以上の小児が少なくとも1回の抗菌薬投与を受ける地域も報告されています

 WHOは、抗菌薬の適正使用とAMR抑止のフレームワークとして、耐性発現リスクや臨床上の重要性に応じて抗菌薬をAccess、Watch、Reserveの3群に分けるAWaRe分類を導入しています。しかし、小児領域における包括的な耐性菌サーベイランスデータは限られており、臨床現場における根拠に基づいた意思決定を困難にしていました

 本論文は、国際的な耐性菌監視データベースを用いて、世界82カ国の小児から分離された10万株以上の病原菌を対象に、AWaRe分類に基づく耐性動向の解析と2035年までの将来予測を行った研究です

 

方法

 本研究は、2004年1月から2022年12月までにATLAS(Antimicrobial Testing Leadership and Surveillance)データベースに登録された、82カ国の0〜18歳の小児106,581名から得られた細菌分離株106,581株を解析した多地域観察研究です

 対象病原菌は、WHOが指定する優先病原菌(Klebsiella spp, Escherichia coli, Acinetobacter baumannii, Pseudomonas aeruginosa, Staphylococcus aureusなど)とされました。抗菌薬はWHO AWaRe分類に従って分類され、カテゴリ内の少なくとも1種類の抗菌薬に耐性を示す場合を耐性ありと定義しました

 統計解析では、経時的推移の評価に線形モデルおよび非線形モデルが用いられ、年齢層、ICUを含む診療セッティング、感染症候群(敗血症、呼吸器感染症など)、地域および収入レベルによるサブグループ解析が行われました。さらに、時空間一般化加法モデル(GAM)を用いて2035年までの耐性率の推移予測が算出されました

 

結果

 2004年ー2022年にかけて、小児における薬剤耐性はすべての地域で増加傾向を示しました。Access抗菌薬に対する耐性率が平均36%(2〜66%)と最も高かったものの、Watch群(平均22%)およびReserve群(平均13%)に対する耐性率も上昇を示しました

 ICUにおける耐性上昇が著しく、Watch群に対する耐性率は15%から33%へ、Reserve群に対する耐性率は9%から32%へと上昇しました。この傾向は、0〜2歳の乳幼児、敗血症や呼吸器感染症の症例で顕著でした。低所得・中所得国における耐性率は高所得国と比較して一貫して高い水準で推移しました

 菌種別では、Acinetobacter baumanniiがすべてのAWaReカテゴリで55%を超える最も高い耐性率を示しましたKlebsiella sppでは、東南アジア、東欧、西太平洋地域を中心に第3・第4世代セファロスポリンおよびカルバペネムに対する耐性率が急速に増加しました

 2035年までの予測では、Access群に対する耐性率は横ばいまたは微減傾向を示すものの、Watch群およびReserve群に対する耐性率はグラム陰性桿菌を中心に増加し続けると試算されました。2035年までに、Klebsiella sppのカルバペネム耐性率は35%、A. baumanniiでは82%に達すると予測されています

Six-panel figure with world map and charts of isolate counts by year, region, setting, infection, pathogen.

 

考察

 本研究の解析結果は、小児の重症感染症において広域抗菌薬への耐性が拡大しており、経験的治療(empiric therapy)の有効性が損なわれつつある実態を物語っています。Access群に対する耐性率が高止まりしている背景には、長年にわたる第一選択薬としての広範な使用が関係していると考えられます

 一方で、ICUや乳幼児におけるWatch群およびReserve群への耐性増加は深刻な課題です。ICUにおける広域セファロスポリンやカルバペネムの使用による選択圧、ならびに多剤耐性菌の院内伝播が主な要因として挙げられます。Klebsiella sppやE. coliにおける耐性率上昇には、ESBLやカルバペネマーゼをプラスミドを介して水平伝播する機序が強く関与していると推測されます

 特に低リソース地域における耐性拡大は、不適切な抗菌薬使用に加えて、感染管理体制や衛生インフラの制限が複合的に影響しています。小児領域では成人と比較して新規抗菌薬の治験や用量設定データが不足しており、カルバペネム耐性菌に対する治療選択肢が極めて限られている点に注意が必要です

 

結論

 2004年から2022年の19年間において、小児における薬剤耐性菌は世界的に増加しており、特に敗血症や肺炎の原因となる重要なグラム陰性桿菌における耐性拡大が進行しています。このまま推移すれば、2035年にはカルバペネム系薬をはじめとする最終選択薬の選択肢がさらに減少することが懸念されます

 小児年齢層や診療セッティングに応じたきめ細やかな耐性菌サーベイランスの継続、ICU等での感染管理の徹底、そして小児に最適化された抗菌薬適正使用プログラム(Antimicrobial Stewardship)の推進が不可欠です

 

Childhood Antimicrobial Resistance With Global Forecasts | Infectious Diseases | JAMA Pediatrics | JAMA Network