小児感染症科医のお勉強ノート

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小児の口腔カンジダ症 thrushのまとめ UpToDate

小児の口腔カンジダ症 thrush
 乳児によく見られる疾患である。抗菌薬、ステロイド(内服と吸入)、化学療法、放射線療法がリスク因子になる。HIVなどの免疫不全症候群でも見られる。
 
病型は、大きく3つになる。
1.鵞口瘡(pseudomenbraneous oropharyngeal candidiasis)
 最も多い病型。口腔内に白色のプラークを認める。無症状のこともあるし、ミルクや食事を痛みのために拒否することもある。年長児では、口腔内の違和感や、味覚障害、痛みなどを訴える。
 
2.口角びらん症(angular cheilitis)
 非典型的な病型。痛みを伴う亀裂が両側の広角に認められる。免疫抑制者や口角を舐めるくせのある児に見られる。
 
3.急性萎縮性カンジダ症(acute atrophic candidiasis)
 非典型的な病型。舌乳頭のびらんと発赤・疼痛がみられる。口腔粘膜内の細菌叢の変化による。
 
口腔内カンジダの評価と診断
 臨床診断される。必要なら病変を擦り取って、Gram染色やKOH染色を行う。
 通常は、培養検査は必要ないが、繰り返す例、難治例、既にアゾール系抗真菌薬で治療された後に発症した例では、アゾール耐性の菌種である可能性があるので、培養を採取する。細胞性免疫不全(特にHIV感染症)の精査を繰り返す例、難治例、重症例では行う。
 
治療法
年齢・免疫状態により異なる
・1ヶ月未満:ナイスタチンはポリエン系抗真菌薬で最初の治療で最も好まれる。腸管から吸収されない。10万単位(0.5mL)の懸濁液を口腔内に4回投与する。治療期間は5−10日間。治療成功率は29−85%になる。経口ミコナゾール(フロリードゲル=米国では使用できない)は、治療成功率は90%以上。しかし、腸管からの吸収がありえる。胃腸症状の合併が6%の症例で認められる。局所療法への反応が悪い場合には、フルコナゾール3mg/kg/day 7日間投与する。
 
・1−11ヶ月:予防として、児が口に入れるものは清潔にしておく。
  免疫正常の場合:まずは局所療法を優先する。ナイスタチン20万単位を1日4回 7−14日間が第1選択。治療反応が悪い場合には、再度感染したか(哺乳瓶の汚染など)、非典型的な菌の感染を考える。ナイスタチンの治療成功率は、29−85%程度で、フルコナゾールが代替薬として使用できる。フルコナゾールは、治療効果の発現が早く、治療成功率も高く、副作用の発現率も同じ。 
  難治例・免疫不全者の場合:フルコナゾールの内服を推奨。フルコナゾール 3-6mg/kg/dを使用する。治療期間は7−14日間である。これで改善しないときには、培養を採取して、感受性を確認する。そして、免疫状態を評価する。
 
・12ヶ月以上:まずは重症度を評価すす
   軽症:口腔粘膜の50%以下の面積で、びらんや深い病変がない
   中等症〜重症:口腔粘膜の50%以上の面積、または、びらんや深い病変がある
 
 ・軽症+免疫正常:ナイスタチンまたはクロトリマゾール
 ・軽症+免疫不全、中等症/重症:通常は、経口フルコナゾールを使用する
  初日のみ6mg/kg/dとして、それ以降は3mg/kg/dとする
  治療期間は7−14日間
  痛みが強い場合には、点滴でフルコナゾールを投与しても良い。
 
 ケトコナゾール、イトラコナゾール、クロトリマゾール、ポサコナゾールでも治療効果はほぼ同等。
 
日本の添付文書
イトラコナゾールの併用禁忌
シルデナフィル(レバチオ)、タダラフィル(アドシルカ
リバーロキサバン、ダビガトラン、ピモジド、キニジン、ベプリジル、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、エルゴタミンなど
 
ミコナゾールの併用禁忌
ワルファリン、リバーロキサバン、モジド、キニジン、ベプリジル、トリアゾラム、シンバスタチン、アゼルニジピン、ニソルジピン、エルゴタミンなど