小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

エリスロマイシン眼軟膏はクラミジア結膜炎を予防しない

 多くの施設で、出生したばかりの新生児にエリスロマイシン眼軟膏(かつては点眼液)が塗布されるかと思います。ずっと、クラミジア結膜炎の予防だと思っていたのですが、クラミジア結膜炎を予防する効果は無いんですね。(淋菌性結膜炎は予防します。)

 新生児結膜炎についてまとめてみました。

 

新生児結膜炎

 要点①:淋菌とクラミジアが重要な起炎菌になる。
 
【淋菌性結膜炎】別名:新生児膿漏眼
 生後2−5日で、膿性眼脂、眼瞼腫脹、結膜充血、浮腫を認める
 培養やPCRで診断する
 治療は、キノロンマクロライドの点滴、状況により抗菌薬の全身投与
 
クラミジア結膜炎】別名:封入体性結膜炎
 淋菌に比べて発症が遅い。生後5−12日が多い。
 軽度の結膜充血から、大量の膿性分泌物・結膜の偽膜形成もある
 PCRや蛍光抗体法により診断する
 治療はエリスロマイシンの14日間内服
 エリスロマイシンの局所治療(点眼液)はあまり有効ではない
 予防にエリスロマイシン眼軟膏を使用しても効果は証明されていない。
 妊婦のスクリーニングが重要。

 

Canadaのガイドライン

【新生児の結膜炎予防】
・エリスロマイシンによる新生児の結膜炎予防はカナダにおいて、有用性は低く、一律には推奨されない。
 
【母体のスクリーニング】
・すべての妊婦は、淋菌とクラミジアのスクリーニングを、初回の妊婦健診で受けるべきである。
・感染が判明した場合には、妊娠中に治療を行う。治療成功したかを確認するため、治療後と3rd trimesterに確認する。リスクの高い妊婦は、初回スクリーニング陰性でも、3rd trimesterでもう一度STIのスクリーニングを行う。
 
【淋菌に曝露された新生児のマネージメント】
・淋菌の治療を行っていない妊婦から生まれた全ての新生児が治療を受けられるシステムを構築するべきである。
・母の結果が退院時に判明していない場合には、連絡先を確認して、陽性なら迅速に連絡を取る。生後7日目まで、眼脂など目の症状が無いかを確認する。もし、母がこの推奨に従えないかもしれない、淋菌感染のリスクがあるときには、退院前にセフトリアキソン単回投与を検討する。
・母が分娩時に淋菌感染を未治療の場合、児は出生後(経膣分娩、帝王切開とも)すぐに検査と治療を行う。
 ・児が健康そうな場合、結膜の培養を行い、セフトリアキソンを単回投与する。
  セフトリアキソンの単回投与は安全であり、胆汁うっ滞のリスクもない。
 ・児が健康そうではない場合、血液培養と髄液培養を採取する。淋菌感染症が証明された場合には、検査と治療に関して、小児感染症専門医にコンサルトする。

 

参考文献

・周産期医学 2018;48(8):1003

・Can J Infect Dis Med Microbil. 2015;26(3):122