小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2024-01-01から1年間の記事一覧

抗菌薬投与後の下痢の予防方法

抗菌薬は、細菌感染症の治療に必須の薬剤ですが、副作用として下痢が見られることがよくあります。治療のために必要だけど、下痢が続き、赤ちゃんのおしりが真っ赤になると心が痛みます。プロバイオティクスが、抗菌薬関連の下痢症予防に有効かをみた研究で…

CIDの表紙に日本の木版画が!

IDSA(米国感染症学会)の学会誌の最新号の表紙が、麻疹退治の木版画でした。 麻疹退治(Hashika taiji)」、1862年、歌川芳藤(日本、1828–1889年)、江戸(東京)、E.13607-1886。ヴィクトリア・アルバート博物館(ロンドン、英国)所蔵. 19世紀中頃、日本…

小児におけるCOVID-19重症化のリスク因子

日本では、現状ではCOVID-19の流行は落ち着いていますが、毎年冬と夏の2回の流行が定着してきたように思います。改めて、小児における重症化リスクを大規模データから導き出した検討です。 オミクロン株になり、更に重症化リスクは減っていると思いますが、…

MRワクチン後の血小板減少性紫斑病(ITP)について

ワクチンによる免疫反応がきっかけで、血小板減少性紫斑病(ITP)を発症することがあります。風疹ワクチンが有名ですが、他のワクチンでも起きます。 ワクチン関連のITPを経験した時、もう一度同じワクチンを打っても良いのでしょうか?疑問に思ったので、調…

虫垂炎に対して、タゾピペ(ピペラシリン・タゾバクタム)を減らしたい

現在、コロナ後の抗菌薬の使用状況をまとめています。外科系領域でピペラシリン・タゾバクタム(タゾピペ、ゾシン)の使用量がかなり増えていることが分かり、対応を考えています。 ちょうどそんな中、抗菌薬適正使用推進プログラム(ASP)により、小児の虫…

尿路感染の再発予防にクランベリージュースは効くのか?

尿路感染症を再発するお子さんの管理は難しいです。膀胱尿管逆流や神経因性膀胱などがあると、管理は困難になります。一般的には、予防的抗菌薬投与などを行いますが、結局、投与している抗菌薬に耐性の菌が定着し、感染を再燃します。 どうにも困った症例に…

どうして小児科開業医はペニシリンを処方しないのか?

小児の感染症で最も使用頻度が多い抗菌薬はペニシリン(主にアモキシシリン)です。しかし、原則どおりに処方されないケースが多々あります。外来小児科学会の会員(主に小児科開業医の先生)にアンケートを行い、ペニシリンを処方しない理由(処方する理由…

De-escalationは耐性Gram陰性菌の発生を抑制する

感染症診療において、初期治療(エンピリック治療)を開始後、感染症の原因菌が特定されたら、最適治療に変更します。通常、より狭域の抗菌薬に変更できるのでde-escalationと言います。De-escalationにより、患者予後が良くなる、医療費が減る、一部の合併…

副鼻腔炎の抗菌薬、有効な患者はどんな人?

小児の副鼻腔炎はよくある病気ですが、結構、見落とされがちな病気です。しかも、時々、頭蓋内膿瘍などの重篤な合併症を起こします。しかし、全員に抗菌薬投与というのもやりすぎで、抗菌薬投与のメリットが大きい患者に使用することが望ましいです。 本日紹…

腸間膜リンパ節炎のレビュー論文

腸間膜リンパ節炎は、日常で見かけることがありますが、あまり教科書的に詳しい記述のない疾患です。「虫垂炎やろ!」って思った症例が、「腸間膜リンパ節炎です」となると、治療(抗菌薬や投与期間など)について、悩んでしまいます。 2017年のレビュー論文…

中耳炎の抗菌薬は長期処方されがち

中耳炎は小児にコモンな疾患で、よく抗菌薬が使用されます。 現状では、抗菌薬を使用する場合、アモキシシリン(・クラブラン酸)が第一選択薬です。ざっくりと、2歳未満 or 鼓膜穿孔がある or 再発性では、10日間の治療が推奨されます。2歳以上で鼓膜穿孔無…

RSウイルス感染症が治療できる時代はもうすぐ

今年は、RSウイルスが熱いです。昨年から今年にかけて、コロナ後初めての大きな流行になっています。一方でシナジスの適応拡大、ベイフォータスの認可、妊婦用ワクチンアブリスボの導入など、RSウイルス感染症は予防できる疾患になってきました。そこに来て…

髄液細胞数が上昇しないエンテロウイルス髄膜炎

一般小児科では、細菌性髄膜炎の症例が減り、見る機会は非常に減りました。相対的に無菌性髄膜炎・ウイルス性髄膜炎の頻度が多くなります。FilmArrayが出てから、髄膜炎診療も変わってきた部分が多いと感じます。 亀田で研修していたときに、「髄液細胞数が…

生後40日未満の乳児のCOVID-19について

国内では、COVID-19の11波が落ち着きました。小児では重症例は少ないですが、新生児のCOVID-19の場合には慎重な対応が必要です。これまでの経験上、新生児が重症化しやすいという感じは受けなかったのですが、ベルギーから大規模な調査結果が出ました。 要点…

研修医にとって、感染症科が魅力的に見えないのは何故か?

「アメリカでは感染症科は儲からないから人気がないんだよ」と、米国帰りの先生が何度がおっしゃっていました。 でも、日本では、感染症科医の給与も心臓外科医の給与も、基本的に変わりません(残業代の差はありますが。にも関わらず、感染症科はあまり人気…

新生児の敗血症に血培嫌気ボトルは必要??

今年7月に、血液培養ボトルの出荷制限が通知されて、日本中の医療機関の感染症部門が騒然としました。血液培養は、重症感染症において必須の検査で、この検査は正しい感染症診療の基本になります。 そこで、血液培養を取らなくても良いケースを改めて見直し…

ニルセビマブはRSウイルス感染症予防に有効

今年からついに日本でも発売となったニルセビマブ(ベイフォータス)ですが、臨床現場からの効果を示すデータが続々と出てきています。既に、全出生児を対象に接種している地域もあり、RSウイルス感染症の疫学が変わりそうです。 Early Impact of Nirsevimab…

総合病院・大学病院にも小児感染症の専門家を!

先日、小児感染症の集まりで、全国の小児病院や大学病院での広域抗菌薬(カルバペネム系)の使用量が比較された資料をみました。 全般的には、小児病院では広域抗菌薬の使用量が少なく、大学病院で多い傾向がありました(入院している患者層の影響は大きいと…

RSウイルス感染における母親のリスク

今年も多くのRSウイルス感染の症例を経験しました。一般的には、早産児や基礎疾患があるお子さんが重症化しやすいのですが、特にリスクの無い赤ちゃんでも、呼吸不全まで至ることもあります。様々な予防手段が出ているものの、重症化に関して、母親のリスク…

AmpC産生菌の治療薬と治療失敗のリスク

AmpC産生菌は、治療中にAmpC過剰産生を始める(脱抑制)ケースがあります。主な菌種としては、Enterobacterなどで、治療中に3世代セフェムなどの抗菌薬が効かなくなってしまうと、治療失敗に繋がります。 前任地の先生が調べてくれたまとめがあります。実際…

AIを使って胎児の妊娠週数を推定する

初期研修のとき、産科で胎児エコーをさせていただきましたが、計測が上手にできず、指導医の計測値とずいぶんズレがあった事を思い出します。妊娠週数を決定するエコーは、経験値と技術が必要です。また、そもそも超音波が利用しにくい途上国などの地域では…

人工涙液によるカルバペネマーゼ産生菌緑膿菌のアウトブレイク

人工涙液(点眼薬)に、カルバペネマーゼ産生緑膿菌が混入していたために、アウトブレイクが発生した報告になります。7%が死亡、22%が眼球摘出となっており、感染症を発症すると予後が悪いです。(おそらく販売数は多いので、感染症を発症してしまう割合は…

ロックダウン中に腸重積が減少した

腸重積は、小児のコモンな疾患ですが、胃腸炎などで腸間膜リンパ節が腫れたりすることがきっかけで起こるとも言われています。昔、O157感染症で腸重積になった症例もあります。 COVID-19パンデミックでロックダウンがあった時には、あらゆる感染症が減少しま…

小児結膜炎のケア戦略比較

結膜炎は、小児科医もよく経験しますが、なんとなく点眼抗菌薬を処方してしまい、また、保育園からは出席停止になってしまう病気です。しかも、子どもは元気!という。米国で、結膜炎に抗菌薬処方を控えたり、出席停止扱いにしないほうが、(二次感染が起き…

ほとんどの小児の気道感染では抗菌薬は5日間で良い Give me five!

子どもに抗菌薬を内服させるのは、本当に大変です。自分の経験でも、しばらくはなんとか飲ませられますが、そのうち嫌がるようになり、なかなか処方された日数をコンプリートするのは困難です。 感染症には、標準的な治療期間が決まっています。溶連菌の咽頭…

NICU入院中の菌血症症例の特徴

NICUは、非常に特殊な病棟です。1000g未満の赤ちゃんから、重い心臓病や消化器の病気を持つ赤ちゃんなどがいます。また、1mlの採血で貧血になることもあれば、使用できる薬剤が限られていたり、投与量の計画も難しいです。 そんな中、侵襲的な治療を行ってい…

なんか説明ができないときはマイコプラズマ

マイコプラズマ感染症の臨床症状は、多彩です。通常は肺炎を起こす病原体ですが、皮疹(多形滲出性紅斑など)や関節炎なども起こします。これら、肺炎以外の症状を肺外症状と言います。研修医の頃、上級医から「なんか説明つかないときには、とりあえずマイ…

論文のアブストラクト作成においても、AIは人に追いついた

生成AIの進化が止まりません。 この論文も、まずChatGPTに要約させてから、読んでいるんですが、絶対に間違えだと思ったのが、「アブストラクトの査読経験がある参加者(68人、66.7%)は、経験のない参加者よりも識別の正確性が低かった(39.7% vs 49.3%)。…

RSウイルスの流行は、検査のやり過ぎによる見せかけの流行かも(米国)

2023年は、久しぶりのRSウイルス感染症の大きな流行がありました。人工呼吸器管理が必要な症例や通常の入院も多く、パンデミック後の呼吸器ウイルス感染の疫学が変わったことを肌で感じました。 米国でも同じくRSウイルスの流行が報告されていますが、この論…

ESBL産生菌による尿路感染症の治療(ESPIDより)

ESBL産生大腸菌および肺炎桿菌による尿路感染症の治療 ESBL産生菌は、日本でも比較的多く見ることのある耐性菌です。大腸菌やクレブシエラ(肺炎桿菌)に多いです。当院でも大腸菌の約10%がESBL産生菌です。 この論文は、ESBL(拡張スペクトラムβ-ラクタマ…