小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2025-01-01から1年間の記事一覧

永山斑の歴史を調べてみた。

前回、海外で永山斑がどのように認識されているか照会しました。今回は、日本で永山斑が発見された歴史を調べました。 pedsid.hatenadiary.com 永山斑は、福岡の永山徳郎先生が1943年に報告されたそうです。太平洋戦争中の大変な時期に、このような報告がさ…

緊張性縦隔気腫に対するCTガイド下胸骨傍ドレナージの安全性と有効性

縦隔気腫は、気管支喘息発作などで時々見かける合併症ですが、あまり重篤になることはありません。しかし、気腫が悪化すると、循環や呼吸状態に影響する事があり、緊張性縦隔気腫といいます。ちょうど、気胸もチェックバルブになると緊張性気胸になるのと同…

新生児(0〜28日)発熱での髄膜炎スクリーニング — PECARNルールの臨床有用性と限界

新生児の発熱に、髄液検査をするかどうかは、小児科の当直中にすごい迷うところです。しかし、全員にするのか、夜間は人手もないなど、いろんな制約もあり、必ずできるとも限りませんし、全身状態が良い場合、必要性も迷います。色々な基準がありますが、有…

RSV感染症を症状から予測するスコア

Development and Validation of a Temporal Progression-based Risk Assessment Tool for Respiratory Syncytial Virus Infection in Infants The Pediatric Infectious Disease Journal, 2025年12月号, Vol.44(12), pp.1145-1152. DOI:10.1097/INF.00000000…

小児病院における無駄な医療をなくすには

価値の低い医療を減らすことは、医療費の削減にとても重要です。特にDPCで入院医療を提供する病院では、収益面でのメリットもあります。米国で、低価値の医療をいくつか定義して、小児病院での実施率の中央値と、特に実施率の低い病院での実施率(ベンチマー…

突発性発疹の永山斑点は、海外では認識されているのか?

突発性発疹の咽頭所見である「永山斑」は有名ですが、海外の教科書ではあまり詳しく取り上げられません。かろうじて、Longでは、以下の記載がありました。 「Diffuse pharyngeal erythema, a mild maculopapular enanthem on the soft palate and uvula (Nag…

βラクタム系抗菌薬の即時型・遅延型アレルギーのレビュー

今年読んだ中で、一番良いレビュー論文かもしれません。 私の中でのベータラクタムアレルギーに対する疑問の多くに応えてくれています。 重要と思われる点を抜粋しました ペニシリン・セフェム系抗菌薬と、モノバクタム・カルバペネム系抗菌薬に交差反応性な…

百日咳の咳は100日も続くのか?

咳が2週間以内で収まる百日咳もあるので、注意しましょうというお話。 Evaluating the role of cough duration in the pertussis case definition among Michigan cases, 2000–2010 Journal of Infection and Public Health, 2019;16:100973. はじめに 百日…

肝移植レシピエントにおける下痢への対応

生体肝移植は、日本で多く実施されていますが、慣れない施設にとっては、肝移植後の患者さんの診察は緊張します。肝移植後の下痢の鑑別について論文です。少し古いですが、よくまとまっていると思います。 Diarrhea in Liver Transplant Recipients: Etiolog…

マクロライド耐性マイコプラズマにはトスフロキサシンで良いのか?

今年は、マクロライド耐性マイコプラズマ(MRMP)が流行しています。当地でも、本当に多いです。成人では、テトラサイクリンが第一選択になっており、よく効くと思いますが、8歳未満の小児では副作用のため原則テトラサイクリンは使用できません。そのため、…

Lipschütz潰瘍の症例レビュー:小児・思春期に見られる急性外陰病変

以前にも書いたことがあるのですが、久しぶりに症例を見たので、Review記事をまとめました。初めてみたときは、単純ヘルペスかなと思いましたが、EBウイルス、マイコプラズなどで発症すると知って、びっくりしました。 Lipschütz’s acute vulvar ulcer: a sy…

小児RSウイルス感染症の最新知見:重症化リスクと世界的課題

昨年に発行されたLancetのRSウイルスに関するレビュー記事です。今年もRSウイルス感染症が増えてきて、受診や入院が増えていますが、有効な治療が無いことも悩ましいです。 Severe respiratory syncytial virus infection in children: burden, management, …

小児心臓手術後の黄色ブドウ球菌感染予防:ムピロシン+クロルヘキシジン全例除菌の効果

小児心臓手術に関する話題2です。 Savary L, De Luca A, El Arid J-M, et al. Systematic skin and nasal decolonization lowers Staphylococcus infection in pediatric cardiac surgery. Arch Pediatr. 2022;29(3):177–182. はじめに 小児の開心術後感染は…

小児心臓手術とセファゾリン予防投与量は十分か?

心臓手術の周術期に使用されるセファゾリンですが、小児で使用する量は、成人の量を参考に決めています。今回、小児心臓手術で、皮切直前、体外循環を導入する時(回路内投与)、以降4時間おき投与のプロトコルでは、セファゾリンの血中濃度がかなり低下する…

パラインフルエンザウイルス(PIV)入院負担:米国小児多施設サーベイランス

マルチプレックスPCR検査(フィルムアレイ)が導入され、パラインフルエンザウイルスの検出ができるようになりました。結構多かったんだ…と感じることがあります。米国のサーベイランスでの、パラインフルエンザウイルスの入院負荷をみたものです。 Weinberg…

早発型新生児敗血症と小児てんかんリスク:デンマーク全国コホート研究の結果

Andersen M, Matthiesen NB, Murra M, Nielsen SY, Henriksen TB. Early-Onset Neonatal Infection and Epilepsy in Children. JAMA Netw Open. 2025;8(7):e2519090. はじめに 新生児期の細菌性髄膜炎後にてんかんが増えることは古くから知られていますが,…

小児科医の昇進が「生涯年収」を左右する? 米国の小児科のリアル給料

全員にとって大事なキャリアとお金の話です。アメリカの脳外科医・整形外科医は、すごい給料が良くて、感染症科医や小児科医は給料が低いというのは有名です。小児+感染症科医は、一番低い?? しかし、そういったサブスペシャリティではなく、早期の昇進も…

2025-2026シーズンのワクチン最新エビデンス:新型コロナ・RSV・インフルエンザの予防効果と安全性

久々の更新になりました。ワクチンに関するエビデンスのアップデートです。 Updated Evidence for Covid-19, RSV, and Influenza Vaccines for 2025-2026. N Engl J Med. 2025 Oct 29. 2025–2026シーズンの注目ワクチン ―コロナ・RSV・インフルエンザの最新…

尿が濁ってるから尿路感染ね、って正しいのか!?

小児科外来をやっていると、「尿が濁っているからUTIっぽいね」とか、「尿の見た目は透明だから大丈夫そう」とかいう会話がありますが、本当でしょうか? 先日も、すごく混濁尿が出ていた新生児の発熱の症例をみたのですが、Gram染色で全く菌体を認めず、肩…

AIで小児科医の苦手が一つ減るかも

私は、脳波を読むのが苦手です。異常と正常の境界が分かりにくく、膨大なデータのどこをどうみたら良いのか十分理解できていないんだと思います。 脳波の判読もAIがやってみたら良いんじゃないのか?という疑問からじっしされた研究です。現時点ですでにAIは…

小児サルモネラ菌血症の抗菌薬は何日?短期静注療法は妥当か。

久しぶりの更新になりました。 サルモネラは、細菌性腸炎の原因になりますが、菌血症になることもあります。爬虫類などとの接触とも関連し、小児でも時々見かけます。菌血症になった時、何日間くらい点滴で治療するか、迷いますが、比較的短くてもいいよとい…

感染性心内膜炎と血液培養陽転化までの時間

感染性心内膜炎は、死亡率が非常に高い疾患です。心臓の弁など心内膜に感染が生じ、菌血症が持続します。感染性心内膜炎では、「血液中の菌量も多いはずなので、血液培養が陽性になるまでの時間が短いはず」ということで、血培陽性になるまでの時間で、診断…

BCGワクチンの再接種は結核予防に効果があるのか?大規模臨床試験での結果

小児感染症科医なら一度は考えたことがある(?)BCGワクチンの再接種。BCGで乳児の結核が予防できるのなら、乳児期以降に再接種したら、以降の結核罹患も予防できるのでは?という臨床的な疑問から実施された研究です。 しかし、実際はあまり効果が無いよう…

生後すぐの百日咳ワクチン接種が小児期の免疫に与える影響

国内で流行が続く百日咳ですが、生後すぐに百日咳単独ワクチン(日本にはない)を接種した場合、その後の免疫獲得に影響を及ぼすかを検討したものです。 結果として、特に問題がなさそうであり、妊娠中に百日咳ワクチンを接種しなかった場合の緊急接種として…

インフルエンザの感染予防におけるバロキサビル(ゾフルーザ)の有効性

バロキサビルは、単回投与ですむ内服の抗インフルエンザ薬です。商品名はゾフルーザです。個人的には、耐性ウイルスの懸念、インフルエンザへの投与実績の少なさから、使用することは少なかったのです。しかし、昨シーズン、子どもがインフルエンザになって…

ICUでカテーテル先端の培養が陽性だった場合、治療するべき?

Treatment of positive catheter tip culture without bloodstream infections in critically ill patients. A case-cohort study from the OUTCOMEREA network Buetti N, Zahar JR, Adda M, et al. Intensive Care Med. 2024;50:1108–1118. doi:10.1007/s00…

βラクタム長時間投与療法(extended-infusion therapy)はグラム陰性菌菌血症の死亡率を下げるのか?

Extended-Infusion β-Lactam Therapy, Mortality, and Subsequent Antibiotic Resistance Among Hospitalized Adults With Gram-Negative Bloodstream Infections Karaba SM, Cosgrove SE, Lee JH, et al. JAMA Netw Open. 2024;7(7):e2418234. doi:10.1001/…

PICUで管理された重症百日咳

Severe pertussis infections in pediatric intensive care units: a multicenter study Akçay N, Tosun D, Bingöl İ, et al. European Journal of Pediatrics. 2025;184:138. https://doi.org/10.1007/s00431-025-05978-0 はじめに 百日咳(pertussis)は、…

なぜ百日咳では白血球増多が起きるのか?

日本国内で百日咳が増えています。特に免疫を持たない乳児での重症化が恐ろしい疾患です。百日咳では、リンパ球増多・白血球増多が特徴ですが、その理由に関するレビューです。 news.yahoo.co.jp Pertussis leukocytosis: mechanisms, clinical relevance an…

小児敗血症の初期血管作動薬はどちらが有効?アドレナリンvsノルアドレナリンの比較

成人では、敗血症性ショックではノルアドレナリンが一般的だと思いますが、小児では、結論は出ていませんでした。 Epinephrine vs Norepinephrine as Initial Treatment in Children With Septic ShockEisenberg MA, Georgette N, Baker AH, et al. JAMA Net…