小児感染症科医のお勉強ノート

小児感染症を専門に診療しています。論文や病気のまとめを紹介します。

2025-2026シーズンのワクチン最新エビデンス:新型コロナ・RSV・インフルエンザの予防効果と安全性

久々の更新になりました。ワクチンに関するエビデンスのアップデートです。

Updated Evidence for Covid-19, RSV, and Influenza Vaccines for 2025-2026.

N Engl J Med. 2025 Oct 29. 

 

 

2025–2026シーズンの注目ワクチン ―コロナ・RSV・インフルエンザの最新エビデンスまとめ―

 

はじめに

 毎年冬になると、小児から高齢者まで多くの人が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、RSV(呼吸器合胞体ウイルス)、インフルエンザなどの感染症に罹患します。これらの感染症は、特に乳児や高齢者で重症化リスクが高く注意が必要です。今回紹介する論文は、アメリカCDCの諮問機関であるACIP(Advisory Committee on Immunization Practices:予防接種諮問委員会)の最新データをもとに、2025–2026年シーズンのワクチン効果と安全性を総まとめしたレビューです。

 

方法

研究チームは、米国内で使われている新型コロナ、RSV、インフルエンザワクチンに関する511本の研究を解析しました。対象は乳児、妊婦、高齢者、免疫不全者など、さまざまな年齢層やリスク群を含んでいます。主要評価ポイントは、「入院予防効果」でした。

 

結果

新型コロナワクチン(XBB.1.5対応型)
 成人全体では入院を約50%減らす効果がありました。高齢者では入院予防効果が56%程度、死亡予防効果も60%以上。免疫不全のある人でも約37%の効果が認められています。ワクチンの株と流行株がずれると効果は下がりますが、新しい流行株に合わせた迅速なアップデートが重要とされています。

 

 

RSVワクチン
 RSV対策はここ数年で大きく進歩しました。妊婦へのRSVpreFワクチン投与で、乳児のRSV入院が68%減少。乳児へのニルセビマブ(長時間作用型抗RSV抗体)は、入院を約80%予防し、ICU入室も同程度減らしました。60歳以上の高齢者でも、RSVワクチンは80%近い入院予防効果を示しています。

 

インフルエンザ
 インフルエンザワクチンは、小児で67%、成人で48%、高齢者では製剤によって40~50%程度の入院予防効果が報告されています。特に高用量ワクチンやアジュバント(免疫増強成分)入り製剤が、高齢者ではより効果的とされています。

 

安全性について

 COVID-19ワクチン後の心筋炎は思春期~若年成人男性で10万回あたり1~3例とまれですが、接種間隔をあけることでリスクは下がる傾向にあります。妊婦へのCOVID-19ワクチンでは流産、死産、先天異常との関連は認められず、むしろ早産リスクが低下する報告もあります。妊婦へのRSVワクチンは、接種時期を妊娠32〜36週にすることで早産のリスク増加は見られませんでした。高齢者RSVワクチンでは、まれにギラン・バレー症候群(神経障害)がわずかに増加したものの、100万回あたり十数例程度と極めて稀です。

 

考察

 このレビューから明らかになった点は、重症化リスクの高い人ほどワクチンの恩恵が大きいということです。乳児では、RSVの母体ワクチンとニルセビマブが入院予防の大きな柱となります。高齢者では、COVID-19やインフルエンザ、RSVすべてに対して複数のワクチンが選択肢として存在し、「呼吸器感染症による冬季の入院を防ぐ」ことが現実的に可能になりました。

 

結論

 2025–2026年の呼吸器感染症シーズンに向けて、ワクチンによる予防の重要性はますます高まっています。小児領域ではRSV対策の進化(母体ワクチン+ニルセビマブ)、成人・高齢者ではコロナ・RSV・インフルの三本柱です。これらを適切に組み合わせることで、入院や死亡を大幅に減らすことができるでしょう。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov